FXのレバレッジ規制は本当に投資家保護に繋がるのか?

金融庁は今年店頭FX業者のレバレッジを25倍から10倍に引き下げることを検討しており、すでに4回の有識者会議を行い5月30日に第5回の有識者会議を実施して、最終的な結論を出す見込みとなっています。

しかしこのレバ規制は実際「何のために行われようとしているのか」は非常に不透明であり、表向きに出てきている投資家保護や店頭FX業者の破綻リスク軽減といった理由とはまったく別の目的があって進められているのではないか?との穿った見方さえ飛び出し始めています。

現状ではまだ確定的な状況には至っていませんが、これまで金融庁が規制方針を打ち出して撤回されたことはないだけに、ほぼレバレッジ規制の実施は確実な状況に至っているといえます。

今回はこのレバレッジ規制が本当に「投資家保護につながるのかどうか」について考えてみたいと思います。

今回の規制は投資家保護より事業者破綻防止が目的

これまで国内では段階的に個人投資家向けのレバレッジ規制が行われてきました。まず2010年に50倍となり、翌年になる2011年の8月にはさらに25倍へと強化されています。

この25倍というのは諸外国でも実施されている上限レバレッジであり、投資家が過度な投資をして証拠金を失うだけでなく損失を抱えて追証の支払いを余儀なくされる不測の事態を回避するという点では致し方ない規制ということは言えると思います。

しかし、ここへきて10倍にする意味というのがよくわからない状況です。

たしかにレバレッジを下げれば一回で売買できるボリュームは同じ証拠金だけでトレードした場合6割減少するわけですから、ほとんどの個人投資家の取引サイズは小さくなります。

ですが、レバレッジが下がっても暴落した場合のリスクが減少するわけではなく、個人投資家にとってはほとんど意味がない状況です。

今回金融庁がレバ規制に動く理由としているのは、個人投資家保護とは別に店頭FX業者の破綻リスクを上げています。

すでに年間5000兆円という巨額の取引規模を誇る国内FX市場で相場急変が起こると、業者の損失リスクが高まるためこのままの状況を看過しているわけにはいかないという話です。

まるでごく近い将来に「暴落」が起きることを予期しているかのような話ですが、実際暴落が起きた場合「25倍のレバレッジはそんなに危ないのか」ということが問題になってきます。

2015年スイスフランショックでも破綻した本邦FX業者なし

直近の暴落事例として欠かせないのが「2015年1月15日」に起きたスイス中銀の、対ユーロに対する永続的な介入によるスイスフランの買い支えギブアップ宣言に端を発したスイスフランの暴騰とその他通貨の暴落劇でした。

この時には「ゼロカット方式」を採用していた欧州のアルパリなどの業者が破綻に追い込まれ、日本法人も別法人でありながら事業を中止し撤退に追い込まれることとなりました。

しかし肝心の本邦店頭FX業者は一社も破綻に追い込まれるところはなく、追証を求められた個人投資家は一定量発生したようですが、もともと一人当たりの取引量はそれほど多額ではないため、甚大な損害に見舞われることは回避できているのです。

こうした状況を見ますと、レバレッジを下げることよりも店頭FX業者の資本金を増強して、何があっても大丈夫なようにすることのほうがよほど重要であるように思えます。

あえてレバレッジを下げることで取引量を減少させることにより、店頭業者を弱体化させるほうがよほど業界をトータルで弱まることになるのではないかと危惧されます。

くりっく365には適用されないという噂

もう一つ気になるのは今回のレバ規制が「くりっく365」という取引所取引FXのほうには適用されないという話です。

まだこちらは正式に決定しているわけではありませんが、どうも規制の対象となるのはもっぱら店頭FX業者だけになろとしているのです。

もともとこの「くりっく365」という取引形態は2005年の金融商品取引法の改正にともなって、それまで市場で横行していた店頭FXの悪徳業者を駆逐し、より公正で透明性の高い取引ができるようにと東京金融取引所により開設された公設の市場です。

たしかにこの取引所FXが登場してから、国内の店頭業者はかなり改善が進んだことは確かで当初はそれなりの役割を果たしたということができます。

店頭FXはすべて業者と個人投資家の相対取引ですが、くりっく365は証券取引所と同じ取引所取引であることから取引の透明性は高いといえます。

しかし2013年には取引手数料をゼロにする業者が増えたものの、なんのことはないスプレッドにその分を上乗せしただけのものですから、日常的にドル円のスプレッドは3銭という猛烈に幅広いものになっています。

また、1万通貨からしか取引できないということで、必ずしもくりっく365が店頭FXの代用口座にはならない存在であることは明らかで、くりっく365だけに25倍のレバが継続適用になっても店頭業者の受け皿にはならない可能性が高まります。

もともとこのくりっく365は財務省の役人の天下りの受け皿という性格も強かったようです。

実質的にFXといえば店頭業者が99%近い取引シェアをもつなかで、潰さないために「あえて店頭業者だけレバレッジを下げようとしているのではないか」といった憶測も流れ始めている状況です。

10倍規制実施で起きる3つのシナリオ

恐らくレバレッジ規制10倍は年内に施行されることになるのではないかと思われますが、実際にこれが無理やり施行された場合どのようなことが市場に起こることになるのでしょうか?

現在国内でFX取引の口座を開設しているのは500万人強といわれていますが、重複口座や休眠口座を考えますとほぼアクティブなユーザーは100万人強とみられています。

このユーザーがレバレッジ規制でどのように反応するかが注目されます。

考えられるシナリオは3つ存在します。

 

<シナリオ1>店頭業者を利用していた個人投資家がくりっく365へと口座移行

25倍のレバレッジが保たれなくなれば必要証拠金は大きく変化することになりますから、仕方なく「くりっく365へと移行」する個人投資家が増えることが予想されます。

しかし「くりっく365」はスキャルピングなどの取引をする人間にとっては、まったく使いにくい口座ですから果たしてどれだけの人間がこちらに移行するかが注目されます。

 

<シナリオ2>FX取引する個人投資家が激減する

この表は1ドル110円換算で見たレバレッジ毎の必要証拠金の額です。

これまで25倍のレバレッジならばなんとか10万円程度の過少証拠金でも取引は可能であったわけですが、これが10倍となればドル円1000通貨取引しただけでも11000円もの証拠金がかかるわけですから、もはや過少証拠金で取引きすることはできなくなります。

しかし上述のように「くりっく365」は必ずしも店頭FXの受け皿にはなりませんから、レバレッジ規制を機にFX市場から大量に個人投資家が去っていき、仮想通貨などに移行することも十分に考えられるのです。

 

<シナリオ3>個人投資家が海外業者に活路を求める

3つ目に考えられるシナリオとしては国内の店頭業者の利用を諦めて「海外FX業者」のハイレバレッジを利用する個人投資家が増えるという可能性です。

実際2006年から2007年ごろまで国内でも最大400倍、平均でも200倍程度のレバレッジが当たり前でした。

当時は一貫してドル安円高が進んでいましたから、とにかくハイレバレッジで戻り売りだけしていればかなりの個人投資家が巨額の利益を得ることができてFXで「億り人」も多く誕生した時期でした。

足元の相場状況は必ずしもそれと同様ではありませんが、少なくともハイレバレッジを利用すれば少ない資金を増やすことはできるわけです。

一発逆転を狙うような向きが相当海外業者に流れることも想定される状況です。

国内では金融庁が海外FX業者を敵視していますが、G7加盟国間では相互に顧客を勧誘しないようにしていることから、米国やオーストラリアなどの業者ではすでに取引ができません。

しかし、キプロスやその他の国の業者に関しては取引をすること自体に違法性はありませんから、今後この領域にヘビーユーザーが移行していくことも十分に考えられる状況です。

実は円高阻止に密に貢献してきたミセスワタナベ

国内のFX取引は5000兆円を超え、そのほとんどが店頭FX業者を介した相対取引となっています。

足元で話題になっている仮想通貨の国内市場が60兆円、日銀が買い漁ることで有名な国内ETF市場が30兆円ほどですから、この個人投資家主体の国内FX市場がいかに大きなものだったかを改めて痛感させられます。

国内個人投資家はほぼその8割以上がドル円の取引を行っており、下値では逆張りし上値でも戻り売りをするというかなり特異な売買を延々と続けてきました。

ですから、少なく見積もっても4000兆円分の取引はいわゆる「ミセスワタナベ」がドル円相場の維持のために寄与してきたことになります。

これがレバレッジ規制実施となれば、普通に考えても6割近く取引が減少することが容易に予想できますから、2400兆円がドル円取引で減少することも予想され、今後確実に円高が到来しそうな雰囲気にもなってきているのです。

もちろん個人投資家は投機筋の一部ですから、ドル円を下値で支えるといっても買い切り玉で応戦しているわけではありませんが、資金の巨額さから言えば政府がドル円に介入する以上の効果をもってきたわけです。

この辺りを日銀、財務省、金融庁が正確に把握しているのかどうかが非常に気になるところです。

またこうした資金の多くは本邦の金融機関、インターバンクなどをカバー先として利用していますから、国内の金融機関の為替取引にもかなり寄与している状況で、この規制が実施されれば国内市場の為替取引は世界的に見てもさらに地盤沈下が進むことが予想されます。

店頭業者は淘汰の時代を迎えることに

国内では現在「53社」ほどの店頭FX業者が存在するようですが、中には証券業を営んでいるところもありますから、いわゆる専業の業者というのはさらにその数が絞られることになります。

取引アイテムの一つとしてFXの相対取引を提供するところはレバレッジ規制が決定的なダメージにはならないのかも知れません。

しかし、FXだけの専業業者の場合、このレバレッジ規制で取引ボリュームが著しく減少するようなことになれば、現況を維持することができなくなることは間違いない状況です。

とくにリピートイフダンやシストレなど国内業者ならではのサービスを提供してきたところは、必要証拠金が大幅に増えることから利用者が激減することが予想され、かなりのサービスが市場から消えることも十分に躁的出来ます。

こうなると店頭業者数自体が減少することになるでしょうし、結果的に国内FX市場は大幅に縮減し、利用者も漸減して衰退業界になることさえ考えられることになります。

過去の50倍から25倍へのレバレッジダウン時の状況を考えて、店頭業者ではレバ規制実施によりほぼ3割程度の取引業者を想定しているようですが、10倍ともなれば必要証拠金は全く異なるレベルになることから6割近い取引ダウンも十分にありうる状況です。

このレバレッジ規制が「くりっく365」にだけは適用されないということになれば、その理不尽さは尋常ではないものになりそうで、消費者保護などを大義名分にしてどうしてこうした判断がまかり通るのか首をかしげる状況になりそうです。

塩漬けポジション保有の投資家は強制ロスカットも

このレバレッジ10倍規制は、今年中に実施されるのか来年からになるのかはまだ全くはっきりしていません。

しかし、10倍レバレッジが実施となれば長年塩漬けのポジションを保有してきたような個人投資家は、一斉に証拠金不足から強制ロスカットを食らうことになることも予想され、レバレッジ規制の犠牲になる投資家が出ることも危惧されます。

店頭FXの取引業者で構成される金融先物取引業協会は表立って金融庁に抗議をするといった行動には出ていないようですが、この規制が実施されれば業界が著しく淘汰されることを一体どう思っているのか非常に気になるところです。

ここ1年近く、FX投資家はそうでなくても仮想通貨クラスタのほうに移行して比較的取引形態の似ている仮想通貨取引に専念する向きもかなり増えているようです。

更にレバレッジ規制が施行されれば、国内FX市場がかなりさびれてしまうのは間違いなさそうで、残った個人投資家の取引も活性化しなくなることが考えられます。

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